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December 13

マッピング・ザ・ワールド: メリーランドハイツ

アリーナに入ったとき、目に入るものは無造作に散らばった木、建物、岩… それだけだったことを想像してみてください。そうした環境での戦いに楽しみを見いだせるでしょうか?きっと無理でしょう!そのため、マップ制作チームは、細部にまでこだわり、ユニークな設定と魅力的なビジュアルを提供できるよう努力しています。

 

私たちは、面白いビデオゲームの核となる要素は、銃撃戦やアクションだけでなく、インタラクティブで景観の良い環境に没頭できることだと信じています。私たちの考えでは、このようなアプローチは、プレイヤーのゲームエクスペリエンスを向上させます。独自の美学を持つ多様なゾーン、背後から身を隠すことや破壊が可能な建造物、そしてただ目を楽しませてくれるスポットなど、プレイヤーはマップ内の移動をより楽しむことができるようになるでしょう。

 

『マッピング・ザ・ワールド』プロジェクトは、マップデザインに関するチームのパイプライン(チームがたどるプロセス)を解明することを目的としています。今回はメリーランドハイツを取り上げ、最も目を引くポイントを紹介します。ただし、マップ制作は今も進行中で、見ていただくものはどれも今後手直しされる可能性があることにご注意ください。

 

メイキング

メリーランドハイツの旅に出る前に、チームがマップのアイデアを具現化するステップを紹介しましょう。

最初期段階で、レベルデザイナーはコンセプトアーティストと協力して未来のマップのアイデアを生み出し、そのためのユニークな自然のバイオーム(特定の環境、植物の選択など)を選択します。通常、テーマを決めたゾーンに自然や人工のランドマークを加えたいくつかのバリエーションが提案されます。白熱した議論の末、最終的に1つのバリエーションが残ります。他のどのマッププロジェクトとも異なり、卓越したゲーム体験をプレイヤーに提供するものです。

次の段階はブロック化という骨の折れる作業で、レベルデザインチームが基本テンプレートを使って地形を整え、オブジェクトを配置し始めます。これらは面数の少ないプリミティブなローポリ3Dモデルで、マップの概略的な初期バリエーション(プロトタイプ)に使用されます。このステップが完了すると、マップは社内プレイテストの準備が整い、ゲームプレイをテストしてマップのナビゲーションとバランスセクションを改善します。

メリーランドハイツの初期プロトタイプ

アートとレベルデザインはここで融合し、コンセプトアーティストと3Dアーティストがマップオブジェクトを丹念に作り上げます。その結果、テンプレートはより洗練され、細部が作り込まれた形になり始めます。

次はレベルアートチームの出番です。レベルアートチームは、ゲームプレイ上の制限を、プレイヤーが戦うマップに変える役目を追います。

概して、この作業を節目にマップの完成形が見えてきます。しかし、物語はまだ終わりません。ゲームもチームも常に進化し続けます!ゲームモードが変わり、新しいキャラクターが登場し、新しい技術が適用され、より高度なツールが開発に使われるるようになります。こうしてマップは徐々に進化し、しばしば局所的な変更が必要となります。

したがって、環境設計は多くの側面を含む複雑なプロセスであり、複数のチームの総力を結集する必要があります。

 

現実世界からの影響

さて、メリーランドハイツの話題に戻り、デザイン時にチームにインスピレーションを与えたものを確認しましょう。

岩だらけの崖、広大な畑、のどかな田園風景に整然と立ち並ぶ家々… そんな光景を目にしたとき、特定の地域が思い浮かぶことはないでしょうか?

そうなっても何も不思議はありません!実際、このマップの地形に影響を与えた場所は実在します。真っ先に挙げられるのが、米国ウェストバージニア州の山間部に位置する小さく平和な町、ハーパーズ・フェリーです。また、ウェストバージニア州のチャールズタウンやメリーランド州のフレデリックからも深い影響を受けています。これらの地域は、貴重な史跡があるとともに過ぎ去った日々の雰囲気が凝縮されており、チームのインスピレーションの源となりました。

最終的にメリーランドハイツはさまざまな地域のコラージュとなり、典型的なアメリカ東部の田園風景を受け継ぐことになりました。

ストーリーを解き明かす

ゲームを開始してマップを巡ると、あちこちのディテールに気づくことでしょう。これらは、あなたの心にあるイメージを呼び起こすためにチームが残した繊細な手がかりです。荒れ果てた建物、海岸にそのまま残されたボート、放置された車、生き物のいない風景…これらすべてが大災厄後の世界の雰囲気を盛り上げ、このゲームの舞台が無人となった未来の地球であることを示しています。

メリーランドハイツの陰鬱ともいえる寂れた景観は、ゲームの舞台設定から生まれたものです。不毛の地の外観は、不可避の大災害によって人々が地球を去らざるを得なくなったとき、地球のインフラや人類に何が起こったかを示唆しています。人類が地球を捨てたことを表現するため、アートチームはマップのデザイン要素に殺風景な雰囲気を植え付けました。

開発の洞察

このマップは最初に取り組んだものです。言うまでもなく、その作成と発展には、当初から特有の要素と課題がありました。

ゲームプレイやゲームモードの戦略が、マップの形状よりも早く「進化」したのです。その結果、この2つの部門の要求に応じて、いくつかのゾーンが開発されました。

例えば、要求事項の一つに、キャラクターのサイズに合ったオブジェクト(最も背の高いキャラクターが身を隠せるようなオブジェクトなど)でエリアを作ることがあります。このことは、マップのビジュアルコンポーネントの選択に大きく影響しました。その結果、当初計画されていたエリアが日の目を見ることはなくなりました。

ハンターはプレイヤーにとって、行く手を阻むあらゆるものを粉砕し破壊する巨大な戦闘マシーンとして認識されなくてはなりません。この"止められない"という感覚は、サウンドやエフェクト、物を壊す能力だけでなく、ビジュアルによってもサポートされるべきです。チームにとって、キャラクターの迫力とスケールを表現し、人工物とのサイズの違いを強調することは非常に重要です。こうすることでプレイヤーは、ハンターが擬人化されたクリーチャーとは全く異なり、強烈なダメージを与える巨大ロボットであると認識しやすくなります。

キャラクターの大きさを屋外環境にマッチさせることは非常に重要で、マップを作るときにしばしばチームの自由を奪います。メリーランドハイツの設定はハンターたちの外観に合わせる必要があったため、いくつかのオブジェクトのサイズは誇張されているかもしれません。

サイズの異なる様々なキャラクターが登場するため、マップの要素に様々な修正が加えられました。通路はより広く、構造物は隠れるなどの目的のためにより長くするなど、すべてプレイヤー間のやり取りが問題なく行われるようにするための修正です。

もうひとつの懸念は、『Steel Hunters』が三人称視点のゲームであり、カメラがハンターたちのモデルの上に配置され、少し離れた位置からの映像になることでした。そのためオブジェクトは、プレイヤーが遠くからでも認識でき、快適に動き回れるように配置する必要がありました。

このように、現時点でマップのデザインに影響を与えているルールや要件はあまりに多く、マップの内容がいつでも変更される可能性があるほどです。

 

見るべき場所

アートチームが考えるメリーランドハイツのキーワードのひとつは、テーマゾーンです。上のマップでは、そのいくつかに印をつけました。これらの場所は、単に視覚的な楽しみを提供するだけでなく、プレイヤーが方向を確認したり、マップ内を移動する際の目印としても役立ちます。また、破壊可能な構造物と破壊不可能な構造物のどちらが多いかなど、周囲の環境によって異なるゲームプレイが促されることもあります。

テーマゾーンとそのオブジェクトは遠くからでも見えるので、自分の位置を確認したり、チームメイトとコミュニケーションを取ったりするのに便利です。プレイヤーが簡単に見分けられるよう、チームはこれらの場所に個性を持たせました。それぞれにデザインや環境特性(開放感、高低差、近さ、遠さ、弾丸が貫通するかどうかなど)が異なります。そのため、これらの場所は、プレイヤーと開発チームの両方から、他のどの場所よりも注目されるようになっています。

古い水力発電所

こうしたエリアには通常、全体の景観から目立つ特別な建造物があり、プレーヤーの注意を引くようにデザインされています。電波望遠鏡はそうした派手なオブジェクトのひとつで、町の近くにある実に魅力的な光景です。その外観は、ウェストバージニア州グリーンバンクにあるロバート・バード・グリーンバンク望遠鏡(GBT)を参考にしています。遠くからでも見ることができ、プレイヤーにとってはよい印になります。

市街地エリアの構造物のデザインにおいては、チームは実際の建物からインスピレーションを得ました。いくつか例を見てみましょう。ただし、このエリアはまだ開発中であり、急速に改良が加えられている点に注意してください。

市街地の建物

このゾーンの建造物のいくつかは、チャールズタウンの観光名所を模したものです。例えば、町役場(ジェファーソン郡裁判所)、学校(ライト・デニー中学校)、銀行(チャールズタウン銀行)、管理棟(チャールズ・ワシントン・ホール)などです。さらに、小さな建物(カフェやショップなど)は、チャールズタウンにある実際の店舗やレストランを参考にしました。

学校、銀行、管理棟

店舗とレストラン

 

ハーパーズ・フェリーの建物も数多く参考にしました。この町を訪れることがあれば、メリーランド・ハイツでおなじみの場所に出くわすかもしれません。例えば、教会堂の精巧なデザインは、聖ペテロ・ローマ・カトリック教会にインスパイアされたものであることに気づくでしょうだ。

さらに、ハーパーズ・フェリー郵便局の建物の外観は、警察署の建物のモデルの基礎となりました。

教会

最後に、町のランドマークには、複数の建物を参考にモデル化されたものがいくつかあります。例えば、消防署はマッコーム消防署とルイビル消防署という2つの建物のコラージュです。

警察署と消防署

景観デザイン

メリーランド・ハイツの植生もウェストバージニアの影響を受けています。険しい山脈を貫く緑の谷と小川は、この土地の"名刺代わり"です。このような風景はエコツーリストに大きな恵みであり、アメリカでエコパークが人気の理由です。キャンプ場、木の板でできた橋… そんな爽やかな雰囲気を感じられます!

このアメリカを代表する美しさを外すわけにはいきません。チームは絵に描いたような河川敷にハイキングコースと引き船道を追加し、エコパークのように作り上げました。

また、視覚的な変化を加えるため、セネカ・ロックスのような険しい地形や崖を組み込んでいます。

採石場ゾーンに関しては、イタリアのカラーラ大理石の採石場が主なモチーフとなりました。チームは、マップ全体のビジュアルデザインに合うように、またユーザーインターフェースの問題(UIが明るいと、採石場の配色が白っぽくなり、邪魔になる可能性がある)を防ぐために、色を淡くしました。

ゼロから作り上げた場所

前述のように、ゲームプレイによってマップに含まれるべきオブジェクトやゾーンが決まることはよくあります。その結果、私たちのチームは、プレイヤーが特定のアクション(飛び乗る、オブジェクトの内側や外側に身を隠す、そこから射撃するなど)を行えるように組み立てた場所を、決まった参考資料なしで作成することになりました。

その一つが建設現場です。チームは、レベルデザインの要件を満たすためにこれを思いつきました。工業地帯の中に巨大で破壊不可能なオブジェクトが必要だったのです。参考にしたものはありません。

倉庫の初期プロトタイプ

 

倉庫エリアもまた、特定の場所からインスパイアされたものではなく、ランダムに貨物を参照して構成されています。このエリアには2つのレベルがあります。つまり、垂直方向のゲームプレイが含まれるということです。登れるコンテナがあり、そのコンテナがプレイヤーを分断するので、プレイヤーは異なるレベルから互いに影響し合うことができます。これによってバリエーションが増え、プレイヤーの行動が予測しにくくなります。

ゲームプレイという点では、他のエリアは平坦な地形が多く、広々としているのが普通ですが、ここはメリーランドハイツで最もインタラクティブかつ、バトルが最も盛り上がる場所となっています。これは破壊不可能なオブジェクトが密集していることが理由です。例えば市街地エリアと比較すれば、その意味がわかるでしょう。市街地は多くの建物が一つの場所に詰め込まれているように見えますが、ほとんどすべての建物を破壊することができ、相手と同じレベルに留まって、どの方向にも簡単に移動することができます。

言うまでもなく、このエリアはプレイスタイルの多彩なバリエーションとマップの地形の多様性をもたらしています。

市街地に通じる橋では、複雑な作業が必要でした。満たすべき要件があったため、コンセプトチームは、ゼロから端を作り上げる必要がありました。

例えば、破壊不可能にするため、レンガや壊れやすい素材は使えませんでした。さらに、プレイヤーたちが身を隠せるほどの高さと柱、飛び降りられるような上部の隙間なども必要でした。これらの条件はすべて、ビジュアル、ガンプレイ、ナビゲーションに影響を与えます。

つまり、ゲーム内のオブジェクトは、レベルデザインや特定のゲームプレイの目的を考慮して作られているのが普通であることは明らかです。

 

旅の終わり、あるいは…終わりはない?

アイデアからコンセプト、スケッチから洗練された3Dモデルまで、すべてのマップにはそれぞれの誕生ストーリーがあります。

環境デザインは、ビデオゲーム制作の他の段階と同様に複雑なプロセスです。今回の記事が、その基本的な手順を理解する一助となれば幸いです。

ここまで、メリーランドハイツの注目ポイントをいくつか紹介してきましたが、まだまだ発見されていない場所はたくさんあります!ゲームに飛び込んで、この見捨てられた土地を旅しましょう!ただし、マップはまだ未完成であり、パッチごとに進化していくことをお忘れなく。一歩そこに足を踏み入れれば、チームが考え出した新しい要素にすぐに気づくでしょう!